「高嶺……何があったかは聞かない。学校からお前が朋花ちゃんに暴力を振るたって連絡がきて急いで帰ってきたけど……怖いことがあったんだよな?」
自殺しようとしたが止められ、生人君はどこかへ去っていった。
「もう大丈夫だ……お義父さんが居るからな」
お義父さんは魂が抜けたような状態の私を抱きしめてくれる。温かい優しさに包まれ、こんな素晴らしいものを与えてくれる人が近くに居たというのに、自殺なんてしようとした自分はなんて愚かなのだと思う。
だがそれでも波風ちゃんを殺してしまった自分が許せない。自殺なんて間違っているとは分かりつつも自傷したい気持ちで胸が一杯になる。
「ごめんなさいお義父さん……自殺なんてしようとして……でも……」
「謝らないといけないのは俺の方だ。十年前からなんにも成長していなかった」
十年前。震災があったあの年。私が初めて波風ちゃんと出会いお義父さんの娘になった時だ。
「あの時のお前も同じような症状が出ていた。居ないはずの両親と会話して、治るまでに何ヶ月も……どう接したら良いか分からず何もできなかった」
私の蓋をしていた記憶が掘り返される。あの時も私は今のように幻覚を作り出してお義父さんや波風ちゃんを心配させていた。
私も同じ過ちをしてしまっていた。過去に囚われて前に進めず足踏みしてしまっている。
「でももう逃げないからな……何があったとしてもお前は俺の大事な一人娘だ。だから自殺なんて考えちゃだめだ。お義父さんが守るから……お前は元気に、笑顔で居てくれ……!!」
消え入りそうな声でこちらに訴えてくる。彼も波風ちゃん同様に私が笑顔で居ることを願っている。そうは分かっているものの笑えない。自然と涙が出てくる。
「ごめっ……なさい。私……のせいで波風ちゃんが死んで、どうしたらいいか分からなくでぇ……!!」
大好きな父の腕の中で胸中を曝け出し、涙が溢れ声も震え出す。年相応に泣きじゃくりこちらからも抱き返す。
「うわぁぁぁぁん!!」
我慢せず想いを吐露し遠慮なく涙を彼の服に落とす。ひたすらに泣きじゃくり、溜まっていたものを全て吐き出す。
「辛かったんだな……大丈夫だ。好きなだけ泣いていい……」
「う、うぅ……!!」
全てを吐き出し楽になり、水分がなくなり涙も収まったあたりで生人君が部屋に戻ってくる。
「